【連載】米国住宅市場動向≪2023年1月号≫

≪2022年総括≫ 政策金利の急上昇を発端に過熱していた住宅市場は様子見ムードへ

2020年、コロナ禍による未曽有の財政支援、ゼロ金利政策による住宅取得コストの低減、さらには在宅勤務による移住の活発化により、住宅ブームが巻き起こり住宅価格が急激に上昇しました。S&Pケース・シラー住宅価格指数(下図)の通り、2020年から2022年上半期にかけて住宅価格は約40%上昇しました。歴史的に見ると年率4%程度で住宅価格が上昇していましたので、この2年間で約10年分の価格が上昇したことに相当します。住宅ブーム時には内見に長蛇の列を成し、人気エリアにおいては内見をせずに申し込みをしなければ購入できないほど過熱していました。そのため、市場に出回る住宅在庫は歴史的低水準となり、一部では「在庫がないから買えない」状態が続きました。

2022年3月、FRB(米連邦準備委員会)が金融引き締めを開始したことで、住宅ローン金利は歴史的低水準の2%台から6%台にまで一気に押し上げられました。先の住宅価格の上昇と相まって住宅取得コストが大幅に増加し、加えて住宅在庫不足も影響したことで住宅販売が鈍化、2020年以降続いていた住宅ブームに陰りが見え始めました。一方、住宅の売り手は、住宅ローン金利が2%~5%の時に住宅を購入(借換え)をした人が殆どであったため、6%台の高金利時に今の家を売却してまで次の新たな住宅を購入するインセンティブが働かず、住宅市場は買い手と売り手の双方が様子見ムードとなりました。

2022年下半期はこれまで急上昇していた住宅価格が調整し始め、地域間格差はあるものの住宅価格が下落しつつあります。特に、投資用物件やAirbnbなどの短期貸出目的物件の処分売りが加速している地域における住宅価格の下落幅が大きくなっています。また、住宅ローン金利は11月の7.08%をピークに6.61%まで過去最大となる下落を見せたことで、住宅ローン申請件数の増加、新築住宅販売の増加など、住宅市場は回復の兆しを見せ始めました。

 

≪2023年見通し≫ 前半から住宅市場が徐々に回復、後半にかけて住宅需要の回復に期待

以下は2022年1月~12月までの住宅ローン金利(折れ線)とS&Pケース・シラー住宅価格指数(棒)の関係を示したグラフです。住宅ローン金利は毎日アップデートされておりますが、S&Pケース・シラー住宅価格指数は3ヵ月遅行しており、最新データが10月となっています。
2022年1月以降、住宅ローン金利および住宅価格はいずれも上昇していましたが、住宅ローン金利が5%を超えた付近から住宅価格の伸びが鈍化、6~7月にかけて住宅ローン金利が5%台後半を付けると住宅価格の伸び率はマイナスに転じました。
これは、住宅ローン金利が上昇すると住宅販売が鈍化するため、住宅価格が下落することを示唆していると考えられます。
住宅ローン金利が11月に7%を付けて現在は6%で高止まりしていることから、データが3ヵ月遅行している住宅価格指数は11月、12月の指標もマイナスになることが予想されます。
前述の通り、2022年下半期は、住宅ローン金利が7%から過去最大となる1週間の下落を見せた直後から住宅ローンの申請件数が増加し、住宅販売は回復しつつあります。これは、2023年以降も住宅ローン金利が大幅に上昇しない限り、住宅価格の更なる下落を期待することができ、一般世帯の住宅取得能力は大きく改善することとなります。そうすると、2023年後半にかけて住宅需要が回復し、2021年のような住宅ブームとまではいかないまでも、住宅市場は再び盛り上がるのではないかと考えられます。
今回は住宅ローン金利と住宅価格動向の2つの側面からの考察となるため、その他の経済動向次第ではこの限りではありませんが、一つの考え方としてご参考になれば幸いです。